深夜の電車の車庫で
投稿者:熱帯雨林 (1)
皆さんは、電車の車庫についてご存知でしょうか?
私は遥か前に、その電車の車庫(関西にある)で日常清掃のアルバイトをした事があります。
その内容は、夜の10時から深夜2時までの車庫に戻って来た電車の各車両を回って掃き掃除をするというもので、もちろん車庫に戻って来た電車の中は電源が入っていないので真っ暗です。
ですから作業をする時は少し大きめの懐中電灯に紐を通して肩からぶら下げて車両の中を見渡せるようにして掃き掃除に取り掛かります。
最初は夜の真っ暗な車庫での清掃と聞いて、怖いのかな?と思いましたが、やってみるとそんなに怖くありませんでした。
私が”仕事”と割り切っていたかもしれませんがね、、。
しかし、どうしても周りから”気になる話”が聞こえてくる事があります。
それは電車が走っていれば、必ずと言っていいほど、起こってしまう”電車事故”です。
私が車庫に戻って来たある電車の先頭の車両に乗り掛かると、運転手さんがちょうど立っていたので、「どうも、お疲れ様です」と声を掛けると運転手さんは、不安な表情で「ああ、どうも、、」と返してくれました。
私は、そんな運転手さんの気持ちに気付かず、まだ電源の落ちていない車内の掃き掃除に取り掛かり始め、出来るだけ明るい内にさっさとやってしまおうと思っていると、外から車掌の設備スタッフの方々が電車の横を話し込みながら通って行きました。
「この電車やな?」「運転手も気の毒やな?」「、、仕方ない」私は、そんな外から聞こえる会話を耳にしながら掃き掃除をしていると、三両目に取り掛かる時、電車の電源がパッ!と落ち車内は真っ暗になりました。
私が肩に掛けた懐中電灯の電源を入れ車内を見渡しながら作業に取り掛かると、急にあの「、、仕方ない」と言う言葉と運転手さんのあの不安気な表情が気になり始め、あれは、何の事だったのだろう?と考えてしまいました。
私は、真っ暗な電車内で何度か人を見ています。それも急に、、。しかしそれは、だいたい私以外の作業員の方々でビックリする事はあっても怖くはありません。仕事中ですし。
ただ、その時は妙に気になって、何か気持ちが落ち付かなかった事を覚えています。私が六両目の車内を懐中電灯で照らした時、私はとっさに気付きました。「人身事故だ」
今まで、あくまで周りの経験談としてならいくらでも聞いてきました。驚く事はあっても怖くありませんでした。しかし、今度は、他の作業員の方々の経験談では無く、実際に人身事故のあった車両に居る私は、真っ暗な中で何かいつもとは、違う空気を感じてしまいました。
なんで6両目で気付いたんだろ?
やっぱ仕方ないで済ますんだ!