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心霊

百太郎さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

自殺の名所には近寄らない
短編 2021/10/23 20:29 1,903view
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色々な自殺の名所がありますが、観光名所になっている場所も少なくありません。
小学生の頃、そんな場所に家族旅行をしたことがあります。

私は小学校の1年生で兄が4年生でした。
父は仕事が本当に忙しく一緒に過ごすことはあまりないような人だったので、その旅行は本当に楽しかったです。

仲が良い親戚も一緒に海辺の観光地を回りました。子供は私と兄だけだったと記憶しています。

私の住む地域は、海と山に囲まれたところで、海は身近な存在です。

風光明媚で有名な観光スポットのとなる岬に近づきました。
椿が群生して、本当に綺麗で景色の良い所です。

ただ、私はその岬が近づくにつれてどんどん頭が痛くなってきました。
あり得ない位置で、誰かが話しかけてくるのです。

私は生まれつき左耳の聴力がありません。その声は聞こえないはずの左耳から聞こえるのです。
男とも女とも、大人とも子供ともわからない声でした。

人数も定かではない感じです。「どうして……」と言われてことだけ覚えています。

すごく具合は悪かったのですが、折角の旅行を台無しにしたくなくて我慢をしていました。
聞こえないモノが聞こえることは、以前もあったので無視をしてはしゃぐ振りをしてました。
それだけ、父と過ごすこの旅行が大切だったのです。

群生の椿の道を抜けると、10メートルほど先に岬の先端が見えました。
眼前には太平洋が広がっています。岬には誰もいません。私たち家族の独占です。

その時の海の色はいつもよりも薄暗く見えたことを覚えています。

道の脇にはそっと「一人で考えこまないで、連絡を」的な看板が立てられていました。

父と母は私の少し前を歩いています。ぐずぐずしている間に少し距離があいていました。

追いつこうと一歩踏み出し時、ものすごい勢いで両腕が引っ張られたのです。
手首だけではなく、肘、二の腕、を何人かに摑まれている感触がしました。
足を精一杯踏ん張りますが、すごい勢いでずるずると引き摺られていきます。

私は怖くて声も出せませんでした。みんなが向かっている岬の先ではなく、その手前の崖へ引っ張られているのがわかりました。
どんなに踏ん張っても止まりません。声も出せません。

もうダメかもしれないと思った時、誰かがぐっと私の肩をつかみました。
その瞬間、ひっぱる手がふっと全て消えたのです。助けてくれたのは兄でした。

「何しゆう!」

兄からみたら、私がすごい勢いで崖に向かっている姿が見えたらしく急いで止めてくれたのです。
振り向くと引っ張られ、私が両足を踏ん張ったあとが数メートルくらい土の上に残っていました。
命拾いをしたのです。

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