「は? 毎回?」
友人はおっさんの返答にちょっとパニックになっているようだった。
だって友人にすると実際に内見の際に1度鉢合わせてるんだろう。
「だからアルソックってこと?」
俺が思わずそう聞くと、おっさんはそうそうといって、新しく運ばれたビールに手を伸ばした。
「特に若い女だと。そんなことが何度か続いたらもう気持ち悪がってすぐに引っ越しちまうのよ。体格のいい男だってそうだ、2,3回短期で鉢合わせるのは気にならなくても、それが月に何度もあると途端に怖くなるってわけだ」
おっさんが言うには、年齢は様々だけど時間があって一日中家にいるようなやつらしくて。
何時に帰ってきても、家をでても共有の廊下を歩いて自分の部屋に入る前にガチャっとドアをあけてくるっていう。
男の方はそうやって人が通るとガチャっとドアをあけて様子を毎回伺うのが多くて。
ばばあの場合は、様子をうかがうタイプだけじゃなくて、出てくるのや帰ってくるのをあえて待ってて寂しいのか話しかけてくるのが多いらしいが、これはこれで面倒で人がさっさと引っ越すらしい。
そして人の帰宅、外出のタイミングに合わせて出てくる奴をあわせてこの辺の界隈ではアルソックさんと呼んでいるってことだった。
「一応退去する際はアンケートとして、退去理由を聞くんだけど。やっぱりそこに帰宅や外出に合わせて隣人がでてきて怖いとか書かれちゃうってわけだ。そんでアルソックを入居させたことを知るってわけだ」
そういっておじさんは笑った。
「確かにおじさんは出てきたけれど、そういうヤバイおじさんだって告知事項は受けてない」
「そりゃ告知義務はないことだからな~」
そんなやばい状況を、たった一言告知義務にはないでおじさんはすませてしまった。
「その部屋相場よりちょっとだけ安かったろ。安いのはそれなりの理由がある。もう少しすると流石に周りも気が付いて、値段がさらに下がって、この辺だと踏み倒されるリスクがあっても一旦外国人をいれてうまくいけばアルソックが逃げ出すのを待つとかしたところもあるんだよ」
「外国人をいれる?」
なんでここで外人? ってなってしまう。
「外国人で極端に安い物件を借りるようなのって気がむちゃくちゃ強いタイプが多くて。日本人相手にしてたようなことをすると、直で怒鳴りつけたりするもっとやばいのがいるのよ。そういうのに破格のお金で貸て、さらに2年後に引き払うならちょっと謝礼金もつけるからってことで住んでもらう。部屋の引き払いが確認されたら金を払うってことにしてるから、そいつらも安く住んで、次の部屋の目途もたてて最後に謝礼金もらって引っ越すみたいなことがあるらしいよ~くらいにしておく」
そう言いながらおっさんは俺たちのテーブルの上のつまみに手を伸ばすけれど。
その話が強烈すぎて、こっちの食ってるとかつっこめなかった。
「毎回帰ってきたらそいつんちのドアをけったり、ゴミをそいつの家の前においたり。国が違えば対応も違うのかもな~。まぁ、今のところその後大きなトラブルになったことは聞いたことはないけれど、大きなトラブルになったのに鉢合わせたらやばいだろ。だからそこはやめておいたほうがいいってわけだっと……」
そこまで話すとおっさんは急にヤベッて顔をすると。
「なんてな、途中からフィクションだフィクション。でもまぁ毎回あんたの帰宅、出勤にあわせて隣の部屋のドアをあけてのぞいてくるおっさんとかいるとあんたも嫌だろ。よく考えたほうがいいぜ」
そういうとおっさんは残りのビールをぐっとあおぐと、自分のテーブルの上にのこったつまみをかっこむと伝票を掴んでさっさと出て行ってしまった。

























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