築400年以上の家に出るもの
投稿者:飛鳥 (1)
数年前に滞在した友人宅での出来事です。
その国はイギリスで、のどかで人間よりも動物の方が多いくらいの田舎なのですが、年に一度は訪れているとても好きな地域です。
その年に滞在した友人宅は、築400年以上の歴史がある建物をリノベーションして夫婦二人で住んでいるお家で、昔ながらのレンガと木の梁がめぐっている重厚感があります。
昔はその地域で働いていた子供たちが宿舎として使っていたという、色々興味深いかつ質問したいことがたくさん見えてくるようなストーリーのある建物なのです。
私はそのお宅に遊びに行くことはあっても、宿泊は初めてだったので、こんな歴史的建造物に滞在できるなんて、とワクワクしていました。
滞在最初の夜、彼等の家で友人数名と集まって夕飯をとりリビングでくつろいでいる時、家の主が酔った勢いで家の歴史を語り始めました。
『みんなも知ってる通り、この家ってすごく古くて、元はその昔子どもの労働者が寝泊まりする用の建物だったんだよね。出稼ぎの子や身寄りがなく生きていくために働いていた子、殆どがほんの10歳そこそこの子どもたちだったらしいよ。みんなボロボロの服を着続けて毎日働いていたようだよ。』
外国の昔話、歴史的背景も相まって、私には映画の話を聞いているような感覚で彼の話に引き込まれていきました。
『身丈も今よりぐんと低かった時代、子ども用の建物だからっていうのもあると思うけど、この家の天井がめちゃくちゃ低いのはそのせい。』
確かに、日本人の女性の平均身長である私に丁度いいくらいの高さで作られているせいか、特に男性の友人たちはみんな首を下げながらドアをくぐるのが常で、よく頭を打って笑う、みたいなあるあるまで存在するお家なのです。
『食べ物だって存分に食べられなかっただろうし、ちゃんと大人になるまで成長してこの家を出ていけた子がどのくらいいたかって…かなしい歴史だよね。今でもたまに声が聞こえたり物音がしたり、窓からのぞいているのが見えたりするけど、まぁそういう歴史を知ってると怖くはないけど悲しくはなるよね。』
さらっと怖い話をしてる主。
私は、この後この家で寝るんだ…と一人で血の気が引いていました。
そんな緊張がありつつも、数日間なんの怪奇現象もなく楽しく過ごしていました。
しかし、ついにその日はやってきました。
朝起きて一人リビングの暖炉の前のソファでくつろいでいると、暖炉に小さな塊を見つけました。木でもないし、気になって近くまで見に行くと、皮が縫われて袋状になっているようなものでした。私には何かは分からず、そのままに放置しておいて後々主が帰ってきたときに聞きました。
『おぉ、またか。』
そういうと彼は『彼女(奥さん)には黙ってて、怖がるから。』
といってそれを庭の大きなゴミ箱へ捨てにいくのです。
私は気になってそれが何なのかを聞きました。すると、その皮の袋のようなものは“靴”だというのです。昔々の子どもの革靴。暖炉の煙突は定期的に掃除するらしいのですが、サイズ問題で小柄な子どもがその仕事を担っていたというのです。だから、掃除中に靴が脱げて落としちゃうこともあるとのこと。
ちょっと待って。この数日間この煙突を子どもが掃除してたの?そう思った瞬間あの労働をしてた子どもたちの話を思い出し一気に青ざめてしまいました。
『多分、掃除中に亡くなった子がまだいるんだろうね。たまに暖炉のところに皮靴が落ちてるんだよ。』
ここに住み始めてから数回はある現象とのこと。見つけるたびに捨ててるんだけど、また日が経って忘れたころ突然落ちているというのです。
中年夫婦二人暮らしかと思いきや、子どもが数名は同居しているようでした。
悲しい歴史、悲しい子どもの話。なんで何度も靴が戻ってくるのか。色々な複雑な感情もありましたが、一番大きな感情はやっぱり…
怖いなこの家!!!!
ヨーロピアン妖精譚が大好きです。
もし、そちらの方の話もお持ちでしたら、ぜひ披露していただきたいです。