死んでもなおさまよい続ける曾祖父
投稿者:天功 (4)
母から聞いた話です。
母の祖父、私からしたら曾祖父にあたる人なのですが、不健康な生活をしていた割には元気な人で、中々長生きしたそうです。
亡くなったのは本当に突然だったらしいのですが、長生きしていたこともあって、言い方は悪いですがそこまでしんみりしたかんじもなく、葬儀もいくらか明るい雰囲気だったそうです。
しかし、亡くなった本人はよく分かっていなかったのかもしれません。
母の部屋は2階にあったのですが、夜寝ていると、誰かが階段を上ってくる音がしたというのです。
しかもそれは紛れもなく、曾祖父の足音だったというのです。
そんなの分かるのかと思ったのですが、曾祖父は足を引きずっていたわけではないらしいのですが、足音に特徴があったらしく、亡くなっているにも関わらずその音が聞こえてきたというのです。
曾祖父が大好きだった母はもちろん怖いとも感じず、毎日その音を聞くのを楽しみにしていたというのです。
母はそれを誰にも言いませんでした。
言ってしまうと、終わってしまう気がしたらしいのです。
しかそ曾祖父は、色々なところに出没するようになっていました。
家の中で曾祖父の匂いがしたり、近所の家でも曾祖父の足音がしたり、なんとなく道で曾祖父の声っぽいのが聞こえたり、小さな町だったので、すぐに騒ぎになったそうです。
その町では曾祖父は有名人だったため、みんなが勘づいたのです。
どうしようかとなったのも、仕方ありません。
母はそのときには、どうすればいいのかなんとなく分かったと言います。
きっとおじいさんは、自分が死んだことも分かっていないんだ、きっと誰からも自分が見えていなくて苦しいんだと、それなら自分がと思った母は、まだほんの小さな子供だったはずです。
夜、また足音が聞こえました。
母は言いました、もう来ないでと。
曾祖父は、階段を下りていきました。
それ以降、曾祖父の気配は町から亡くなりました。
もっと言い方があったかもしれないと母は言いますが、きっと強い言葉だったからこそ、曾祖父は気づけたのかもしれません。
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