鈍くて幸せでどうしようもない人たち
投稿者:蒲公英 (1)
短編
2022/03/17
12:25
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私は発達障害です。そのせいか要領が悪く、職場ではいじめられる事がよくありました。
数年前まで働いていたパンの製造工場でも中年の主婦、Kに目を付けられていびられていました。
「成人してるのにこんな事もできないの?」
「すいません」
直接怒られる事も多かったですが、それより嫌味や陰口で責められる方が辛かったです。
ある日の休憩中、皆でテレビを見ていると痛ましい虐待のニュースが流れました。都内在住のまだ幼い女の子が、養父に監禁され餓死したのです。
彼女は暗い部屋に閉じ込められ、一日中ノートに書き取り練習をさせられていたそうです。養父にあてたひらがなの謝罪文の内容には本当に胸が痛みました。
それを眺めていたKが言いました。
「でもすごいよねー。この子まだ幼稚園の年少さんなのにちゃんとした謝罪文が書けて、頭いいなって感心しちゃった」
その後犠牲者の女の子の写真が映し出されると、「可愛いのにもったいない」と呟いてお茶を啜りました。
私は怖くなりました。
可愛くない子は虐待されて殺されても可哀想じゃないのでしょうか?
この子は頭がいいからノート一杯に謝罪文を書けたんじゃなくて、一日中そうしなければ食事すらもらえないから、死に物狂いで頑張っていたのではないでしょうか?
私は確かに足手まといですが、少しでも相手の立場になって想像してみればわかるのに……。
想像力のない普通の人たちが怖くなった瞬間でした。
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