赤い枠が示すもの

私は仕事で古い建物の調査をしています。
この話はそんな仕事中に起きたことです。

その日もいつものように民家の半分倒壊しかかったような古い蔵を、同僚と手分けして調査していました。
いつもと違うことといえば記録に使うための会社のデジカメが新しくなったことくらいでしょうか。

新しいデジカメでしたが使い勝手は前とあまり変わらず問題なく撮影をしていましたが、ときおり液晶モニターに「赤い枠」が表示されることがありました。
何度か試してみましたが、その枠は表示されたりされなかったり、何の機能なのかわかりませんでした。

それでも問題なく撮影できているようだったのであまり気にせず、自分の担当している箇所の写真を撮り終わりました。

調査がひと段落し、同僚と合流すると例の赤い枠について聞いてみました。
同僚が言うにはこのカメラには人の顔を認識してピントを合わせる機能が付いている、赤い枠が表示されたのはきっとこの機能の誤作動だろう、とのことでした。

私もなるほどそういうものかと納得したのですが、どうしても気になることがあります。
その「赤い枠」はその時、液晶画面いっぱいに大きく表示されていたのです。

あれがもし誤作動ではなく、私の目には見えない「誰か」の顔を表示していたのだとしたら、私の持つカメラのほんの鼻先に、その誰かがいたのかもしれません。