会いに来てくれた部長
投稿者:KANA (2)
今から10年以上前の話です。
私は町の小さな不動産会社に勤めていました。社員は20人ほどです。
高卒で入社し、気づけば10年勤め、社内ではお局様扱いされていました。
しかし、職員同士は皆仲がよくアットホームな職場で居心地はよかったです。
その頃私は長年付き合っていた彼氏と結婚することになりました。
仕事は続けたかったのですが、彼氏の転勤についていくことになり退職することにしました。
就職試験で面接をしてくれ、採用を決めてくれた部長に一番に報告しました。
部長は大変喜んでくださり、「君がいなくなるのは会社にとっても痛手だけど、おめでとう。君なら良いお嫁さんになれるよ」と温かい言葉をいただきました。
会社を辞めるまで残り2週間になった頃、朝に出勤すると会社は大騒ぎになっていました。
昨日の退社後、部長が交通事故にあい、病院に運ばれたが今朝早くに亡くなったと。
人望があり、皆に頼りにされていた部長の突然の訃報に只驚くばかりで、社員は呆然としました。数名はお葬式の手伝いに行き残りの社員は関係先の連絡で事務所は大混乱です。
現役で働いていた部長のお葬式には盛大に行われ、参列者も100名以上になりました。
無事にお葬式も終わり、その後は徐々に事務所も落ち着いてきました。
私の退職日に応接室の片付けのために部屋に入ると、人の気配がしました。
「あれ?退室して誰もいないはずなのに、、、」と思いながらよく見ると、部長が座っていました。私が面接を受け、退職の報告をした応接室。部長がいつも座っていた場所に、部長はいて書類を書いていました。私は混乱しギュッとめ目を閉じ、もう一度目を開けたときには、そこには誰もいませんでした。
事務所に戻り、今あったことを話してもみんな信じてくれません。
でも私は確かに部長を見たんです。いつものスーツを着て、以前に私達社員が昇進のお祝いに贈った青いネクタイをした部長を。
不思議と恐さは感じませんでした。誰に言っても信じてくれませんが、私の退職を祝ってこっそり最後に会いに来てくれたんだと今でも思っています。
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