ある区が運営するリハビリ施設
投稿者:冬助 (1)
人がよく口にするような、いわゆる霊感というものは自分には全くないと思っていました。でも、世の中で起こっている不思議な現象などの類は心の中では充分に起こり得るものだと思っています。
もう、十年ほど前の話になりますが、私は持っている調理師免許をどうにか活かすために、本業の他に短時間のアルバイトを始めました。自宅からさほど遠くない場所にある区が運営するリハビリ施設で夕食を作る仕事を始めました。そのときの話です。
仕事は午後の二時から始まり、そして配膳は六時になります。配膳が終わると厨房の掃除をして帰るわけですが、帰る前に食事を作ったあとの生ゴミを外のゴミ庫へ置きに行かなければなりません。そのためには一階のリネン庫を通ります。これがけっこう寂しいところで、廊下は薄暗く、出入り口まではかなり距離があるのです。私は重い生ごみを抱えて誰もいない廊下を歩いて外へ出なければなりません。
ある日、リネン庫の前を通りかかったとき、そのドアが開いていました。中は電気もついてなく真っ暗です。辺りには人の気配はありません。きっと誰かが閉め忘れたのだろうと思い、私はドアを閉めて外へ向かいました。そして生ゴミを置いて再びリネン庫の前を通ったら、またドアが開いているのです。生ゴミを置きに行ったのはほんの数秒のことですから、その間に誰かが再びドアを開けたということはありません。
私は背中に何か冷たいものを感じ、鳥肌が立ちました。そのことを職場の先輩に話すと、実はこの場所には結核病棟があって、そこが取り壊されてからいろんな怪奇現象が起こるのだということです。
気になったので家に帰ってネットで調べてみると、何とそこは関東でも有名な心霊スポットだったのです。
そのことを知ってから間もなく私はアルバイトを辞めました。
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