月の無い夜
投稿者:蔦男 (4)
短編
2022/04/27
13:34
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どこかで聞いたことのある話かもしれません。
ある月の無い夜のことです。
貧しい漁村に一人の旅の僧侶が訪れました。
僧侶は宿を求めましたが、どの家も僧侶の求めに応じませんでした。
お金の無い村人たちには、僧侶一人もてなす余裕すら無かったのです。
そんな中、僧侶を迎え入れた家がありました。
面倒見の良い漁師の夫婦でした。
泊まらせるといっても、他の村人と同じで、酒やごちそうなどを振舞うだけの蓄えはありませんから、板間にゴザを敷くだけです。
僧侶は泊まらせてくれたことにおだやかな声で礼を言って、眠りにつきました。
夫婦も寝ようと準備をしていると、眠る僧侶の荷物から大量のお金がのぞいていました。
貧乏でいることに耐えられなかった夫婦は寝ている僧侶を殺し、そのお金を奪いました。
その後、夫婦は漁師を辞めて高利貸しを始めました。
すると、今までの貧乏が嘘のようにたくさんお金が手に入るようになり、大きな家や豪華な食事にありつけるようになりました。
やがて夫婦は待望の子宝にも恵まれ、幸せの絶頂となります。
ある月の無い夜のことです。
6歳になる息子が夜中にムズがっていました。
面倒見のよい夫が息子を厠へと連れて行きました。
息子が厠で用を足し、夫は外で待っています。
すると、厠の中の息子がおだやかな声で言いました。
「お前に殺された晩も、月の無い夜だったな」
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六部殺しですね