ラップ音に怒鳴ってみたら

　中古で買った家に住んでいた時です。末っ子の娘が、まだ小さくて、お兄ちゃん達は夫が習い事に連れて行っており、私はお気に入りの庭に面した六畳の和室で娘と過ごす事が多かった時でした。

　家が古いからか、よくピシッという音がしていました。娘が喋られない内は、それは家の軋む音だと思って気にしないようにしていました。

　ところが、娘が二歳になり、少し言葉を発する様になって、和室で抱っこしていたところ、虚空を指差し、『おばあちゃん？』と不思議そうに言うではありませんか！私はその時、ピシッという音が、家の軋みではなく、ラップ音だった事に気付きました。

　その後、他の部屋ではラップ音がしないのに、六畳間に入るとラップ音がする事実が明らかになりましたが、その部屋に布団を敷いて寝ていたので、部屋に入らないわけにはいきません。音がしても気にしないようにしていました。

　しかし、ある日のことです。私は六畳間に布団を敷いて、娘とお昼寝をしていました。いつもより激しくラップ音が鳴り、思わず、『うるさいっ‼︎』と声を出しました。すると、ラップ音がおさまり、シーンと静まりました。

　私は、そうか怒鳴るとラップ音が止むんだ！と気付き、それからはラップ音がすると直ぐに『うるさいっ‼︎』と、怒鳴るようにすると、暫くして完全にラップ音がしなくなり、私は勝ったんだ！と思いました。

　おばあさんの姿は私には見えませんでしたが、音だけでもすごい存在感がありました。きっと、おばあさんも庭が見える六畳間が一番好きだったのでしょう。諦めて成仏したんだと思います。

　そんな事があった家を売って、新しく買った中古の家もはじめはラップ音がしていましたが、根気よく怒鳴って、すっかりラップ音がしなくなりました。中古の家を買う時は注意が必要ですね。