マコウリさんの話
投稿者:井中蛙 (1)
大学時代に民俗学系の講義を受けているとき、とある地域で信仰される神様?の話を聞きました。
それはその地域の数件の世帯で神様が祀られた神棚のようなものを順番に回しながらお祈りするといったものです。
このような神棚や御神体を世帯で回す習慣はいろいろな地域にある、と教授が説明したときに私は自分の祖父の家でも似たようなものを地域で回していたことを思い出しました。
自分が幼い頃はまだ両親とともに祖父母の家で暮らしており、関東の田舎にあったその祖父の家では小学生が背負うランドセルほどの木箱を順番に祀っていました。
その箱は観音開きで中には仏像のようなものが入っていた記憶があります。
その神様の正式な名前は知らないのですが、幼い自分の耳には「マコウリさん」「マコリさん」と祖父母が呼んでいるように聞こえていました。
マコウリさんを次の家に回すタイミングは完全にバラバラで、最初の記憶では1年以上祖父の家に置きっぱなしだったはずですが受け取ってから1週間ほどで回してしまった時もありました。
家族の中に病気の人がいたり受験生などがいると事が済むまで家に置き祈るようですが、そうでないときはなるべく家に置かないようにするらしかったです。
お祀りの仕方や回すタイミングについては、いくつかのルールが有ったようですが残念ながらほとんど覚えていません。
実はこのマコウリさんで不思議なことが一つありました。
マコウリさんが家に置いてある間は、家の敷地の中で毎日必ず何らかの生き物が死んでいるということです。
私は当初このことに気づいていませんでしたが、ある日ネズミが廊下で死んでいることが2日続きました。
それについて祖父に話すと「マコウリさんがおられるからなぁ……」とつぶやいたのを覚えています。
幼い私は深く考えずに「そういうものか」となぜか納得してしまったのですが、それから意識してみると確かに目に付く形で毎日何らかの小動物や虫が死んでいるのです。
今では祖父の家も無くなってしまい、マコウリさんがあの地域でどうなっているのかもわかりません。
当時の私は全く恐怖も感じず暮らしていましたが、今思うと少し不気味なものがあります。
コトリバコみたいですね
このくらい曖昧なオチの方が現実味ある