夫婦を引き裂く家

１５年程前、義父から隣に家を買ったので住まないかと誘われた。

元の家主は妻と二人余生を過ごす為その眺望の良い家を購入したが、住み始めてほどなく妻の体調が悪くなり最終的に亡くなってしまい、独りでその家に住む意味がないと売りに出したそうだ。その為、その隣家である義父が購入して娘夫婦である私達を住まわせたのだ。
住み始める際、元オーナーだけでなく、その家を建てた最初の家族も主人に不幸があり、その家は手放されたと聞かされた。しかし、私は過去を気に留めずその家に住み始めた。

ところが、１週間ほどで異変が起こった。私が毎晩のように金縛りに合うようになったのだ。決まって午前２時頃に激しい耳鳴りで目が冷める。その後金縛りになり、目を開ければすぐ目の前に顔が近づいているだろうという気配を感じた。
妻は金縛りにあっていないと言っていたが、日に日に精神的に不安定になっていった。そして最終的に突然家を出ていった。理由は不明のままだ。
私はそれを機に離婚、その家を出たが、今思うとあの家を出ることができ、命を取られなかったことを幸いと考えている。

３家族連続で夫婦が引き裂かれた家、はたしてそれらは偶然だったのだろうか。
あのひどい金縛りを思うと私にはそれは単なる偶然だったとは思えない。
今その家がどうなっているのかは、知りたいとも思わない。