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妖怪・風習・伝奇

菊地 春樹さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

森を徘徊するもの
短編 2022/06/18 16:05 4,947view
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それはあの自分たちが遭遇した者たちにつかまっていた。なんとあの時見た一体ではなかった。

三体もいたのだ。その三体はまるで俺たちを食べようと言わんばかりに口を開けていた。

俺は恐怖のあまりその場から逃げたかった。しかし体が言うことを聞かなかった。

そしてその者はこちらに向かってきた。

「いやだぁ!!︎来るな!!︎来ないでくれぇ!!︎」

そう叫んだ次の瞬間だった。自分の目線の先の草むらからひときわでかい人が現れた。

「えっ?」

俺の目の前に現れたひときわ大きな人は自分の家を指さすとこう言った。

「帰れ」と。

その言葉を聞いた瞬間自分の意識はなくなった。

次に気が付いた時には全身が泥だらけで家の玄関で倒れていたらしい。

その後家族全員から心配され事情を話すとその町の長老が話をしてくれた。

なんでも昔、学校の裏山で一家心中があったらしい。

原因は父親の不倫による家庭内暴力が原因だったとか。

その一家はある日の夜に父親が妻を殺し、それを姉妹に見せつけた後に自分も自殺をしたらしい。

その死体は翌日発見され、警察によって処理された。

だがその夜からその森のほうで奇妙な声が聞こえるようになった。

『アソボ』という不気味な声が。

それ以来その裏山には誰も入らなくなり、いつしかそこは立ち入り禁止になったのだという。

「これで話は終わりだよ」

僕は話し終えるとみんなの反応を見た。みんなは唖然としていたり怖わがっていた。

そして自分は気が付いた。あの時「帰れ」と言った人物は父親だったんだということに。

それにあの人たちは火傷したように見えていたがあれは事故ではなくて……。

自殺…。と考えた自分はその日、寝れなかった。

そしてあの人たちは自分を殺さなかった理由を考えていた。なぜ僕だけ殺されなかったのかを。

それから一ヶ月後。自分が小学校6年生に進級する前の春休みのことだった。

僕は一人で学校の裏山に登った。すると風に乗って彼らの声が聞こえてきた。

『遊ぼうよぉ〜』と。

その声が聞こえた瞬間僕の頭の中で何かが切れたような音が聞こえた。

それ以降あの山は整地されて新しい校舎が建てられたそうだ。

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