父が恐竜を見た話
投稿者:黒坊主 (1)
怖い話ではないがずっと気になっているので投稿させていただく。
自分の父はあまり冗談を好き好んで言う人ではなかった。
普段から寡黙であまりものを話さない男だった。
昭和の男というタイプだった。
そんな父がある日真剣な表情でいってきた。
「俺は恐竜をみたことがある。」
最初は冗談で言っているのかと思ったが、目つきが真剣だった。
くだらない冗談をいう男ではないことは息子である自分が一番よく知っていた。
自分は父の話に耳を傾けた。
あまりお互いに話し合うタイプではなかったので、珍しいと思い話に耳を貸した。
父は若いころ、まだ日本がバブルに入るか入らないかというときにオーストラリアにいったことがあった。
その当時は日本人というだけで優遇され色々な観光地に連れて行ってもらったことが多くあったそうだ。
とはいえ、父は仕事の都合上でいっただけだった。
父の仕事はいわゆる不動産営業。
その時代は海外へ移住する日本人が今よりも多くおり、海外邦人向けの不動産営業も多くあったといわれている。
父はオーストラリア担当となった。
その時、父はいつもとは違う道で帰ろうと車で町はずれの森林地帯に足を運んだ。
次第に周囲も暗くなり、そこになにがいるのかみえなくなったという。
車の外でマップを開き、帰りの道を確認しようとした。
その時だった。
ヒタリヒタリという足音がした。
すると、二足歩行のトカゲがいることに気が付いた。
大きさは2mほどあるそれは牛の死体を啄んでいた。
緑色の長い尾をはしらせながら、「それ」は父をにらんでいた。
その時父は戦慄する悪寒が背中に走り一目散に逃げたという。
なんとか生きて戻ってこれた父は同僚に見た化け物の姿を話したが、誰も信じなかった。
だがその時、会社の近くに住んでいた先住民の男だけは父を信じたという。
その男曰く、父が見た怪物は「バンガラ」というけだもので人間を含めあらゆる生き物は「バンガラ」に生きる資格をあたえてもらっているだけにすぎないとも教わったそうだ。
ひょっとしたらこの世界にはまだいるのかもしれない。
人の知らない何かが。
こういう話好き