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心霊

鏡子さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

鏡
短編 2021/07/24 19:01 1,590view

私の家は代々医者の家系で、例に漏れることなく私も医者(の卵)である。自慢は程々にして本題に移るとする。

医者という職業柄、人の死に直面する機会が多く存在する。そんなある日私がまだ小学生3年の頃、父が担当していた患者が亡くなってしまった。その患者というのは、生まれつき体が弱く、5歳という若さで亡くなってしまった(以後患者はA子ちゃんと呼ぶ)。私とも面識があり亡くなる前に、私の家に来たいと言っていたのを今でも鮮明に覚えている。その子が亡くなって翌日、急に家が軋み出し、誰もいないはずの階段から音がしたりする、などというありきたりな心霊現象が起こることは無かった。

A子ちゃんとの思い出も徐々に薄れ始めてきたある日、私はトイレにある鏡に妙な違和感を感じた。その違和感を感じ始めてから私はトイレが怖くなり、父親に私がトイレをする時、トイレに一緒に入って欲しいと頼んだ。その日の夜、私は父と一緒にトイレに入り、用を足していた。その時だった、私の寝室に入っていく誰かを父と私が鏡越しにはっきりと見た。私と父は最初、兄が部屋に入ったのだと思った。流石に寝る時間には早かったため不自然に思った私と父は、兄の名前を大声で呼んだ。それなりの大声で呼んだにも関わらず、返事はなかった。用を足し終え私が寝室に入ると、いるはずの兄がいなかった。私は急に怖くなり、急いで居間に駆け込んだ。そこに、兄の姿はなかった。兄はその時風呂に入っていたのだ。そのため、私の寝室に入ることは不可能だった。私の焦りとは裏腹に、父は一切気にしていない様子だった。父も確実に異変に気づいているはずなのに、なぜあのような素っ気ない態度をとったのかは今でも不明であれ。その日からラップ音が頻繁になるようになり、ずっと誰かに見られているような気がし始めた。

そんなある日、私が習い事から帰ってくると、2階から大声が聞こえてきた。恐る恐る覗いてみると「出ていけ」と父が血相を変えて鏡に叫んでいたのだ。私の父は、そのようなことを急にやり始める気の狂った人間でないことは幼いながらに分かっていた。父親は私の存在に気づくと、「この鏡にはA子ちゃんが住み着いている」と言った。父親はオカルト系の話を一切信じておらず、そのようなことを言い出すとは思わなかった。私もその迫力に押し切られ、信じざるを得なかった。その出来事から数日、トイレにあった鏡が新しいものに変えられた。それ以降私の部屋からラップ音は消え、誰かにずっと見られているような感覚はなくなった。

それから十数年たち、私はこの出来事を唯一体験したことのある心霊現象として、サークルの先輩や友達に話してきた。しかし、この話をする時、いつも決まって私から見える位置に”鏡”があり、無意識に鏡の方へ歩いていってしまう。まるで、鏡のが私のことを呼んでいるかのように。

私が体験した心霊現象から得た教訓は、みなさんも鏡の中にいないはずの人間が写った時、その鏡を取り替えることをおすすめします。。

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