サヨナラと言っている
投稿者:道子 (1)
当時、40代の叔母は癌を患っていました。あらゆる治療を試みるも、ある夏の日、帰らぬ人となりました。私が大学一年生の時です。
叔母が息を引き取った日の夜。自室で寝ていた私はふと目を覚ましました。時間を見ると夜中の1時頃です。すると部屋の襖がトントンと鳴ったのです。カタカタとか何かの振動で起こったような音ではなく、トントン。咄嗟に、
「叔母さんがお別れに来ている」
サヨナラと言っていると思いました。同時に怖くなって、肌がけを頭から被り、しばらく眠れずに耳を澄ましていましたが、音はもう何も聞こえませんでした。両親は隣の部屋で寝ていましたが、起きた気配はありません。
何故お別れに来ていると思ったか、自分でも不思議でした。もしかしたら、叔母自身が私は霊感が強い、と常々言っていたからかもしれません。亡くなった誰々の姿を見たことがある、とか幾つかそんな話を聞いたことがありましたが、私には霊感は全く無かったのでとても信じられませんでした。
自ら体験した後も、もしかしたら勘違いだったのかな、でも寝ぼけていたらあんなにハッキリ覚えていないし・・そんな疑念が確信に変わったのは、後日、兄からの話を聞いた時です。お通夜の夜、兄は葬儀場に泊まりましたが、その枕元に叔母が来たそうで夢ではなかったと。
あれから数十年が経ちますが、不思議な体験はあの日だけで、私にはやはり霊感は無いようです。最期に会いに来てくれたのは叔母の霊感の強さ故なのでしょうか。あの時怖がらずにちゃんとお別れを言えたら良かった。そんなことをふと思ったりします。
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