故人からの着信
投稿者:RU (1)
父が病死したときの話です。
父が亡くなり、家族皆ショックで立ち直れない中も、死去後は、お葬式の準備やお世話になった方への連絡、様々な手続きに追われ悲しむ暇もないほど忙しくしておりました。
当時まだ若かった私は、喪服を持ち合わせておらず、姉の車で買い物に出掛けることになりました。姉は、携帯を持っていましたが、私は所持しておらず、母は「もし何かあった時にお姉ちゃんと連絡がとれるように」と、生前父が使っていた携帯電話を私に預けてくれました。
外出先ではなかなか目的のものが見つからず、気が付けば家を出てから5時間以上も時間が経っており、姉と「そろそろ家に帰って母の手伝いもしないと」と、そんな話をしていた時、預かっていた父の携帯の着信音が鳴りました。着信画面には「妻」とありました。
「あれ?お母さんから電話だね?」と電話に出ましたが、母が喋る事はなくしばらく無言が続いていました。
「もしもーし!お母さん聞こえてる?」と何度か言った後、遠くの方からガタッ、バタっ、と何か作業中であろう音と母の独り言が聞こえました。
私達に語りかけてるのではなく、明らかに母の独り言。
「間違えて掛けちゃったのかな?」そう思い電話を切りましたが、再び「妻」から着信が。「もしもし?」と電話に出ましたがまたしても無言。
当時まだスマートフォンではなく折り畳み式のガラケー。間違えて発信ボタンを押す事もあまりなかったので、「お母さんどうしちゃったのかな?電波障害で声が聞こえなかっただけ?でも、生活音は聞こえたから電波障害ってこともなさそうだけど、なんか変だね。」なんて事を話をしながら、姉と車に乗り込みエンジンを掛けようとしたところで、車のロックが勝手に掛かりました。
姉が「どうして鍵掛けてないのに鍵かかったんだろう?」と不思議に思ったそうですが、そのまま自宅に帰って母に「さっき電話した?」と聞くと「なんのこと?」と。
母は、電話どころか忙しくて携帯はリビングに置きっぱなしで全く手にしていなかったとのこと。
母の携帯の発信履歴を確認しましたが、父に掛けた履歴はありませんでした。
母も姉も私も一瞬ゾッとしたものの、「もしかしたら、心配性のお父さんが外も暗くなってきたし早く帰っておいで。と心配して電話くれたのかもね?」と話していました。
車の鍵の事も同様に私達を心配して締めてくれたのかな?と思います。
そして、月日が過ぎ故人が天国へ旅立つと言われている四十九日の日。
私はベッドで1人寝ていた所、突然背中を優しくトントンと叩かれ目が覚めました。しかし、そこには誰も居らず、誰が叩いたのか凄く不思議に思いましたが、きっと父が逝ってくるね。と挨拶をしに来てくれたのかな?とすぐに思い、「お父さん、いってらっしゃい」も言ったことを今もはっきり覚えています。
そういえば、亡くなる1週間前に「父さんが死んだら化けて出てこようと思うんだけどいいか?」と父が聞いてきた事がありました。
その時、私は「うん!お願い!お化けになって出てきて!」と頼んだのです。きっと、父は私との約束を果たしてくれたのだなと思います。
最期まで本当に良い父でした。
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