バーベキューで出会ったみすぼらしい男

これは10年前に友人数人と田舎の河原でバーベキューをしていた時の話です。

場所取りして準備をしている最中、緑のダウンコートを着たみすぼらしい男性が大きな袋をもってキョロキョロしながら近づいてきたんです。
「どうしたんですかー？」
と声をかけると、
「この辺にテント張ってあったんですけど、見てませんよね？」
と。

私たちが到着したのはついさっきでしたがテントなんて見てないし、そんな形跡もないので不思議に思っていました。

困った様子をしたその男性に友人の一人が、
「よかったら一緒にどうですか？」
と声をかけました。
正直誰かもわからない相手と一緒なのは不安でしたが、その男性も、
「お言葉に甘えて……。」
と、拒否しなかったことから渋々一緒にバーべキューをすることになりました。

「よかったらこれ食べてください。近所で獲れた鹿肉です。」

男性が手に持っていた大きな袋の中には、新聞紙で何重にもまかれた大きな鹿肉が入っていました。
これには一同大興奮！
新鮮な鹿肉を頬張り、私たちは楽しい時間を過ごしました。

次の日、私は朝テレビをつけると、背筋の凍るニュースを見てしまいました。
「○○県○○群の民家で、切断された女性の頭部が発見されました。女性の息子を殺人容疑で現在捜査中です。」
その民家は、昨日バーべキューをした河原のすぐ近く。

そして容疑者として載せられた顔写真には、昨日のあのみすぼらしい男の顔が……。
私たちと出会ったあの男は、母親を手にかけた後だったのでしょうか？
そして私たちが食べた鹿肉は、本当に鹿肉だったのでしょうか？